さつまいもコラム
さつまいものつる返しとつる切り|佐々木さんは、つる返しをしていません
さつまいもを育てていると、必ず出てくるのが「つる」の話です。
ただ、調べていると「つる返し」と「つる切り」がよく混ざっています。検索結果でも、つる切りを調べているのにつる返しの解説が出てきたり、知恵袋の回答が「その2つは違います」と正すところから始まっていたりします。
この記事では、まずその2つを分けます。そのうえで、川崎町の佐々木さんは、つる返しをしていません。その理由を、公的な資料と、佐々木さんの言葉の両方から書きます。
結論
- つる返しとつる切りは、別の作業 … 目的も時期も違う
- つる返しはしていない … 公的な資料も「必要ありません」としている
- つる切りは、掘る前日 … 一般に言われる時期より、かなり遅い

まず、この2つは別の作業です
| つる返し | つる切り(つる刈り) | |
|---|---|---|
| いつ | 生育期(夏)に何度も | 収穫の直前に1回 |
| 何をする | 伸びたつるを持ち上げて ひっくり返す | つるを刈って 畝の上をきれいにする |
| 目的 | つるの節から出た根を 切って養分を芋に集める | 掘りやすくする |
| やらないと | (後述します) | つるが絡んで掘れない |
つる返しとは何をする作業か
さつまいものつるは、地面を這うように横へ伸びていきます。そしてつるの節が土に触れると、そこから根を出します。この根を「不定根」と呼びます。
不定根が土に張ると、株が養分をそちらにも回すことになります。本来なら株元の芋に集まるはずの養分が、分散してしまう。だから伸びたつるを持ち上げて裏返し、根を切っておく。これが「つる返し」です。
夏のあいだ、つるが伸びるたびに繰り返します。月に1〜2回すすめられることもある、手間のかかる作業です。
つる切りとは何をする作業か
収穫の直前、茂ったつるを刈り取って、畝の上を掘れる状態にする作業です。「つる刈り」とも呼ばれます。
収穫期のさつまいも畑は、つると葉で畝が完全に隠れています。この状態では、どこに株があるのかも分かりません。刈らないと掘れないので、こちらは避けて通れない作業です。
いちばん大きな違いは目的です。
つる返しは芋を大きくするための作業、つる切りは収穫するための作業です。片方は「育てる」、もう片方は「掘る」。まったく別の話をしています。
そして、佐々木さんがしているのは、つる切りだけです。
佐々木さんは、つる返しをしていません
宮城県川崎町で紅はるかを育てている佐々木さんに、直接うかがいました。畑は東京ドームの半分ほどの広さです。
「つる返しはしていますか」と聞いたときの答えが、これでした。
していません。検証してみたのですが、思ったより効果がありませんでした
ここで大事なのは、「面倒だからやらない」ではないことです。実際にやってみて、効果を確かめたうえでやめている。
つる返しは、面積が広いほど大変な作業になります。東京ドーム半分ほどの畑で、夏のあいだ何度も繰り返すとなれば、かかる時間は相当なものです。やめる理由としては「手間」で十分に説明がつきます。
それでも「検証した」という言い方をされたのが、印象に残りました。やってみて、比べて、効かないと判断した。手間を理由にした話ではありませんでした。
公的な資料も「必要ありません」としています
この答えを聞いてから資料を調べたところ、日本いも類研究会が同じことを書いていました(日本いも類研究会「Q さつまいもに『つる返し』は必要ですか?」・2018年)。
今の品種はちゃんと株際にいもができますし、つるもそんなに伸びません。また、つるにいもがつくことも少なくなりましたから「つる返し」は必要ありません。かえって株を痛めるほうが心配です。
理由は「品種が変わったから」です。
同じ資料の前半には、こう書かれています。
昔の品種はつるが細く、つる先からよく根が出たり、そこにいもが出来たりしました。だから収穫の時、つる切りや収穫が大変だったと思います。
つまり昔は、つるの先にも芋ができていた。だから返す意味があった。今の品種は株際に芋ができるので、返す必要が薄くなったということです。
そして最後の一文が効いています。「かえって株を痛めるほうが心配です」。やらないほうがいい、とまで書いてあります。
資料が「必要ない」と書き、佐々木さんが「検証したら効果がなかった」と言う。別々のところから、同じ結論に着いていました。
ただし、条件は書いておきます
これは東京ドーム半分ほどの畑で、紅はるかを育てている場合の話です。プランターや小さな家庭菜園とは、条件が違います。
それから、いも類研究会の記述は2018年のものです。「今の品種」と書かれているのはその時点での話で、すべての品種・すべての条件に当てはまるとは限りません。
言えるのは、佐々木さんの畑ではやっていない、ということまでです。
つる切りは、掘る「前日」です
ここが、いちばん驚いたところです。
つる切りの時期を調べると、「収穫の1週間前が理想」と紹介されていることが多いです。数日前から1週間前、という書き方をよく見ます。
ところが、佐々木さんの答えは違いました。
前日です。早く刈ってしまうと、さつまいもも生き物ですから、よくないと思っています

刈った翌日に掘る。間を空けません。
なぜ前日なのか、根拠は見つかりませんでした
正直に書きます。調べた範囲では、科学的な裏づけを見つけられませんでした。
そして「1週間前が理想」と書いている記事にも、根拠は示されていません。どちらの言い分にも、公的な資料は見当たりませんでした。
言えるのは、紅はるかを作って出荷している佐々木さんが、前日に刈っているということだけです。「生き物ですから」という言い方に、扱い方の考え方が出ている気がします。
この「傷めない」という考え方は、収穫の場面でも徹底されていました。その話は掘り方の記事にあらためて書きます。
「1週間置くと甘くなる」という説明について
つる切りを調べていると、「つるを切って1週間置くと、水分が絶たれて甘くなる」「表皮がコルク化する」という説明をよく見かけます。前日に刈るのは、これと逆に見えます。
ただ、コルク層をつくるのは、掘ったあとの「キュアリング」という処理です。農研機構は、条件をこう書いています。
温度30〜35 ℃、湿度90〜99 %の環境に3〜4日ほど置く
畑に1週間置いても、この条件にはなりません。同じ資料が書いている目的も「傷や表皮の下にコルク層が形成され、そこからの菌の侵入を防ぐようになるため、貯蔵中の腐敗防止」で、甘くするためとは書かれていません。
甘さのほうが変わるのは、掘ったあとです。その話はさつまいもの収穫時期の記事に書きました。
作業の順番も見てみます。日本いも類研究会は、収穫を「つる切り、掘取り、調製、出荷販売、貯蔵」という工程で説明していますが、間を何日空けるかは書いていません。実際の産地でも、茎葉処理・マルチ剥ぎ・掘り取りは続けて行われます。
「1週間前は間違い」と言いたいのではありません。手で掘るなら、刈ってから日が空くこともあります。ただ、1週間置くこと自体に甘さの裏づけがあるかというと、そこは見つけられませんでした。
つるを刈ったあとの畑
つるを刈ったあとの畑です。

株元の茎が短く残り、葉やつるの切れ端が土の上に散っています。畝の形は、はっきり見えています。この畝の上を、掘り取り機が進んでいきます。
刈って、翌日に掘る。畑の上でつるが乾く時間は、ほとんどありません。「1週間前に刈る」という書き方が前提にしていそうな、乾かすための期間は取っていない、ということです。
家庭菜園では、どうすればいいか
先に断っておくと、私たちは家庭菜園でさつまいもを育てた実績がありません。ここに書けるのは、資料から言えることと、佐々木さんのやり方から推せることだけです。
つる返しは、無理にしなくてよさそうです
いも類研究会が「必要ありません」「かえって株を痛めるほうが心配」と書いています。大変な作業なので、やらないという選択は十分にあり得ます。
ただし、つるが通路まではみ出して歩けない、隣の畝まで覆ってしまったという場合は、整理する意味があります。そのときも「返す」より、邪魔なぶんを寄せる程度で足りると思います。
つる切りは、掘る直前で十分です
目的は掘りやすくすることです。数株を手で掘るなら、掘るその場でつるを切っても構いません。前もって刈っておく必要があるのは、機械を入れる規模の話です。
株元から10〜20cmほど残して切ると、掘るときの持ち手になります。
いつ掘るかは、別の記事に書きました
収穫の時期の見きわめ方と、掘ったあとに何をするかは、さつまいもの収穫時期の記事にまとめています。つるの作業より、じつはそちらのほうが味に効きます。
よくあるご質問
つる返しをしないと、芋が小さくなりませんか?
いも類研究会は「今の品種はちゃんと株際にいもができます」として、つる返しは必要ないとしています。佐々木さんも、検証したうえでやめていて、それで出荷できています。
つるが伸びすぎて困っています
いも類研究会は「さつまいもは肥料のいらない作物ですから、野菜の後作では無肥料にすれば、つるもそんなに伸びないようです」と書いています。つるが茂りすぎるのは、肥料が多い可能性があります。
刈ったつるは食べられますか?
葉柄(茎の部分)は食べられます。きんぴらや煮物にされることがあります。ただし私たちは出荷しておりませんので、作り方はここには書きません。
つる切りに機械は必要ですか?
面積によります。数株なら手で十分です。佐々木さんの畑では機械を使っていますが、それは東京ドーム半分ほどの面積だからです。
出典
- 日本いも類研究会「Q さつまいもに『つる返し』は必要ですか?」(2018年)
- 農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター「輸出用サツマイモの腐敗低減技術を開発」
- 日本いも類研究会「さつまいもMiNi白書 Ⅹ 栽培技術」
- 宮城県川崎町・佐々木さんへの聞き取り(2026年9月)。発言は、意味を変えない範囲で読みやすく整えています
2026年9月時点で、原典にあたって確認した内容です。つる切りの時期については、前日・1週間前のいずれについても公的な根拠を見つけられませんでした。佐々木さんの実際のやり方として記載しています。家庭菜園については、私たちに実績がありません。
まとめ
- つる返しとつる切りは別の作業。育てる作業と、掘る作業
- 佐々木さんはつる返しをしていない。検証して効果がなかったから
- いも類研究会も「必要ありません」「かえって株を痛めるほうが心配」
- 理由は品種が変わったから。今の品種は株際に芋ができる
- つる切りは掘る前日。一般に言われる時期より遅い
- その理由は、佐々木さんにも資料にも、はっきりした説明がない
つるの作業は、調べるほど「やらなくてよい」という話が出てきます。手をかけることが、いつも良い結果になるとは限らないということだと思います。
逆に、手をかけている工程もあります。掘るときです。機械で掘り起こしたあと、必ず人の手で拾い上げています。そのやり方については、あらためて書きます。
そうして収穫した紅はるかを、蔵王のふもとで1〜2ヶ月寝かせてからお届けしています。商品は商品一覧からご覧いただけます。
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今年の収穫分は、なくなり次第販売終了です。
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Company
販売会社について
はじめまして。株式会社芦の口開発の小野瀬と申します。
宮城県仙台市太白区芦の口で地域コミュニティ事業としてさつまいもなどを販売する「芦の口小箱(あしばこ)」の運営と、不動産事業を営んでおります。
私たちは、宮城県川崎町の生産農家さんが大切に育てたさつまいもを、全国のお客様にお届けするため、この通販サイトを運営しています。
蔵王のふもとにある自然豊かな町で、ひとりの生産者がじっくり向き合って育てたさつまいも。鹿児島や茨城のような大産地ではないからこそ、ひとつひとつに目が届く。その良さを、もっと多くの方に知っていただきたい。そんな想いで販売のお手伝いをしています。