さつまいもコラム
干し芋の作り方|甘い干し芋は、蒸す前に決まっている
干し芋の作り方は、蒸して、切って、干す。工程だけならこの3つです。
ただ、同じように作ったのに甘くならなかった、硬くて食べられなかったという話をよく聞きます。
干し芋の甘さは、干す前にほとんど決まっています。
先にお伝えしておくと、私たちは干し芋を販売していません。宮城県川崎町の生の紅はるかを売っている生産・販売者です。ですのでこの記事は、干し芋を買っていただくための記事ではありません。材料になるさつまいもの側から見て、何が甘さを決めているのかを、公的な資料をもとに書きます。
結論:甘さを決めるのは3つだけです
- 寝かせた芋を使う … 掘りたてでは作らない
- 低い温度で、長く加熱する … 70℃前後をどれだけ長く保つか
- 乾かしすぎない … 硬くなる原因はほぼこれ

逆に言うと、干し網の種類や切り方は、甘さにはほとんど関係ありません。そこで悩む前に、上の3つを押さえたほうが結果が変わります。
なぜ甘くなるのか
作り方を紹介しているページはたくさんありますが、なぜ甘くなるのかを説明したものは、あまり見かけません。ここが分かると、失敗の理由も自分で判断できるようになります。
日本いも類研究会は、焼きいもが甘くなる理由をこう説明しています(日本いも類研究会「Q 焼きいもが甘いのはなぜですか?」)。
焼きいもが甘くなるのは、さつまいもに含まれるβーアミラーゼという消化酵素が、加熱されて糊化したでん粉に作用して麦芽糖という甘味成分を生成するためです。この温度が概ね70℃前後ですから、この温度帯をいかに長く保持するかが、甘くておいしい焼きいもづくりのポイントになる訳です。
甘さは、糖を足してつくるものではありません。芋の中のでん粉が、酵素のはたらきで麦芽糖に変わる。その変化が進む温度帯が、およそ70℃前後だということです。
この説明は焼きいもについてのものですが、干し芋をつくるときに芋を蒸す工程でも、同じ酵素がはたらきます。だから「蒸す」は、単に火を通す作業ではありません。甘さをつくっている時間です。
急いで加熱すると、甘くならない理由
同じ資料の補足には、もう少し踏み込んだ記述があります。
でん粉の糊化開始温度は概ね65~75℃位であり、一方、甘しょのβ-アミラーゼの耐熱性は他の植物や細菌類のものと比べてあまり高くなく、失活温度も品種間で差があるが70℃前後である。
ここが、この話のいちばん厄介なところです。
- でん粉が糊化し始めるのが 65〜75℃(これ以上ないと酵素が働けない)
- 酵素が失活するのが 70℃前後(これを超えると酵素が止まる)

酵素が働き始める温度と、止まってしまう温度が、ほとんど重なっています。
だから強火で一気に蒸すと、麦芽糖がつくられる前に酵素が止まってしまう。火が通っているのに甘くないのは、これが理由です。焼き芋の話は焼き芋の温度の記事に詳しく書きました。
まず、芋を選ぶ
ここが、いちばん結果を変えます。
掘りたての芋では作らない
芋掘りでもらった芋で、その日のうちに干し芋を作る。気持ちは分かるのですが、これはいちばん甘くなりにくい作り方です。
紅はるかの品種詳説の「栽培上の注意」には、こう記録されています(日本いも類研究会「さつまいも品種詳説 べにはるか」)。
貯蔵すると蒸しいもの粘質が強くなり、いもから浸出液(ドリップ)が出る場合がある。
これは生産者向けの注意書きとして書かれたものですが、貯蔵で粘質が増すという性質そのものは、ここにはっきり記録されています。収穫したての紅はるかは、公式記録では肉質「やや粉」。つまりほくほく寄りです。
掘ったあと何が起きているのかは、さつまいもの収穫時期の記事にまとめました。寝かせている間に、でん粉が糖に変わっていきます。その変化が進んだ芋を使うほうが、当然ながら甘い干し芋になります。
市販のさつまいもを買って作る場合は、あまり気にしなくて大丈夫です。売り場に並んでいる時点で、たいていは貯蔵を経ています。気をつけたいのは、芋掘りで掘ったばかりの芋を使うときです。
品種は紅はるかが向いています
干し芋の原料として紅はるかが選ばれるのは、貯蔵で粘質が強くなるという、この性質があるからです。ねっとりした食感の干し芋になります。
ほくほく系の品種(ベニアズマなど)でも作れますが、ほろっとした、やや硬めの仕上がりになりやすいです。どちらが良いかは好みです。品種による違いは紅はるかの特徴の記事と紅はるかとシルクスイートの違いの記事に書きました。
大きさは、中くらいがいちばん扱いやすい
大きすぎる芋は中心まで火が通るのに時間がかかり、外側だけ煮崩れます。小さすぎる芋は切ったときに形が残りません。1本200g前後が、蒸しやすく切りやすい大きさです。
形の良し悪しは関係ありません。どうせ切ってしまうので、曲がっていても、傷があっても仕上がりは変わりません。
生の芋2kgで、どれくらいできるのか
作り方を調べていて、これが書かれていないことに気づきました。材料の芋を何kg買えばいいのかが分からないのは、けっこう困ります。
干し芋は、水分を飛ばして作ります。ですのでできあがりは、生の芋よりずっと軽くなります。一般には、生の重さの3分の1から4分の1程度が目安と言われます。皮をむくぶんの目減りもあります。
| 生の芋 | できあがりの目安 | だいたいの感覚 |
|---|---|---|
| 2kg | 500〜650g | 市販の袋(100g前後)で5〜6袋分 |
| 5kg | 1.2〜1.6kg | おすそ分けできる量 |
この数字は一般に言われている目安で、私たちの実測ではありません。干し具合(半生か、しっかり干すか)で大きく変わります。半生に仕上げれば重く、しっかり干せば軽くなります。
はじめて作るなら、2kgくらいがちょうどいいと思います。蒸し器に無理なく入り、干す場所も確保しやすく、失敗しても諦めがつく量です。
蒸す:ここが甘さをつくる工程
先ほどの70℃前後の話が、そのまま効いてくる工程です。
丸ごと蒸す
皮をむいたり切ったりせず、洗って丸ごと蒸します。切ってから蒸すと断面から成分が流れ出てしまいますし、煮崩れやすくもなります。
時間をかける
目安は40分から1時間。竹串がすっと通れば火は通っています。ただし「火が通ること」と「甘くなること」は別です。
強火で短時間だと、中心が70℃を通り過ぎる時間が短くなります。弱めの火で、ゆっくり温度を上げていくほうが、酵素が働く時間を長く取れます。急がないことが、そのまま甘さになります。
加熱時間の目安は一般に言われている数値で、芋の太さと蒸し器によって変わります。太い芋なら1時間を超えることもあります。
切って、干す
熱いうちに皮をむく
冷めると皮がむきにくくなります。やけどに気をつけて、粗熱が取れたくらいでむいてください。
厚さ1cmほどに切る
薄いほど早く乾きますが、薄すぎると硬くなります。1cm前後が扱いやすい厚さです。厚めに切ると、しっとりした半生の仕上がりになります。
干す
| 方法 | 目安 | 向き・不向き |
|---|---|---|
| 天日干し | 3〜5日 | いちばんおいしいと言われる。天気に左右される |
| 室内干し | 5日〜1週間 | 雨の日でも進む。風通しが要る |
| オーブン | 100℃前後で1〜2時間 | その日のうちにできる。食感はやや違う |
天日干しの場合は、重ならないように並べて、1日に1回ひっくり返します。夜は室内に取り込んでください。夜露で湿ると、カビの原因になります。
干す日数は気温と湿度で大きく変わります。ここに書いた日数は一般に言われる目安で、私たちが測ったものではありません。触ってみて、表面が乾いて中がしっとりしていれば十分です。
うまくいかないときの、4つの原因
甘くならない
原因は2つ考えられます。掘りたての芋を使ったか、強火で一気に蒸したかです。どちらもこの記事の前半で書いた話です。芋を替えるか、蒸し方を弱火に変えてみてください。
硬い
干しすぎです。干し芋は完全に乾かすものではありません。表面が乾いて中がしっとり、くらいで止めます。硬くなってしまったら、少し蒸し直すと戻ることがあります。
カビが生えた
乾く前に水分が戻ったときに起きます。夜に外へ出しっぱなしにした、重ねて干した、風が通らない場所だったのいずれかが多いです。カビが生えたものは食べないでください。
黒っぽくなる
切り口が空気に触れて変色したものは、味に問題ありません。ただし断面に黒い斑点が広がっている場合は、冷蔵庫で低温障害を起こした芋である可能性があります。生の状態での保存についてはさつまいもの保存方法の記事に書きました。
白い粉は、カビではありません
干し芋の表面に白い粉が浮くことがあります。これを見て捨ててしまう方がいるのですが、多くの場合、これは糖が結晶になったものです。
| 項目 | 糖の結晶 | カビ |
|---|---|---|
| 見た目 | 白い粉が全体にうっすら | 点々と、青・緑・黒などの色がつく |
| 手ざわり | さらさら | ふわふわした綿状 |
| におい | 変わらない | カビ臭い |
| 出方 | 全体に均一 | 一部から広がる |
白い粉が出るのは、糖がしっかり乗っている証拠でもあります。判断に迷ったら、色とにおいを見てください。色がついている、ふわふわしている、においが変わっているものは食べないでください。
できあがったあとの保存
手作りの干し芋は、市販品のように保存料が入っていません。市販品と同じ感覚で置いておくと傷みます。
- 冷蔵 … 1週間程度。密閉して野菜室へ
- 冷凍 … 1ヶ月程度。1枚ずつラップで包んでから保存袋へ
- 常温 … 半生の場合は避けてください
冷凍したものは、そのまま少し置けば食べられます。焼き芋を冷凍する話は焼き芋の保存方法の記事に書きましたが、干し芋も考え方は同じです。
よくあるご質問
茹でるのと蒸すの、どちらがいいですか?
どちらでも作れます。ただ茹でると、水に溶ける成分が湯に出てしまいます。蒸すほうが味が濃く残ります。茹でる場合は、皮をむかずに丸ごと茹でてください。
オーブンだけで作れますか?
作れます。蒸したあと100℃前後で1〜2時間、様子を見ながら乾かします。天日干しより早く仕上がりますが、食感はやや違うものになります。天気を待てないときの方法として便利です。
干し芋に向いているのは、どの時期ですか?
一般には冬が向いていると言われます。気温が低く空気が乾いているほうが、乾く途中で傷みにくいからです。夏場は湿度が高く、屋外に干すのは難しいと思います。
訳あり品でも作れますか?
問題ありません。形が曲がっていても、大きさが不揃いでも、切ってしまえば仕上がりは変わりません。ただし傷んでいる部分があるものは、そこを取り除いてから使ってください。
出典
2026年9月時点で、原典にあたって確認した内容です。加熱時間・干す日数・できあがりの重量は、一般に言われている目安であり、私たちの実測ではありません。私たちは干し芋を販売しておらず、製造の実績もありません。
まとめ
- 甘さは干す前に決まる。芋選びと蒸し方でほぼ決着する
- 甘さをつくるのはβ-アミラーゼ。働く温度帯は70℃前後
- 糊化温度(65〜75℃)と失活温度(70℃前後)が重なっている。だから急いで蒸すと甘くならない
- 掘りたての芋では作らない。寝かせた芋を使う
- 生の芋2kgで、できあがりは500〜650gが目安
- 硬いのは干しすぎ。白い粉はカビではなく糖の結晶
干し芋づくりは、さつまいもが本来持っている甘さを引き出すだけの作業です。砂糖も何も足しません。だからこそ、材料の芋がそのまま結果になります。
私たちは干し芋を売っていませんが、その材料になる紅はるかを育てて、寝かせて、お送りしています。蔵王のふもとで1〜2ヶ月熟成させた紅はるかは、商品一覧からお選びいただけます。形の不揃いな訳あり品は、切ってしまう干し芋には向いていると思います。
蔵王が育てた、
蜜のごほうびを、
ご自宅へ。
蔵王の麓・宮城県川崎町で育てた熟成紅はるかを、
宮城から全国へお届けします。
今年の収穫分は、なくなり次第販売終了です。
「冬のご褒美」を、ぜひお早めにご予約ください。
ご家庭用にも、贈答用にもおすすめです。
Company
販売会社について
はじめまして。株式会社芦の口開発の小野瀬と申します。
宮城県仙台市太白区芦の口で地域コミュニティ事業としてさつまいもなどを販売する「芦の口小箱(あしばこ)」の運営と、不動産事業を営んでおります。
私たちは、宮城県川崎町の生産農家さんが大切に育てたさつまいもを、全国のお客様にお届けするため、この通販サイトを運営しています。
蔵王のふもとにある自然豊かな町で、ひとりの生産者がじっくり向き合って育てたさつまいも。鹿児島や茨城のような大産地ではないからこそ、ひとつひとつに目が届く。その良さを、もっと多くの方に知っていただきたい。そんな想いで販売のお手伝いをしています。